コラム

【コラム】求人と求職 求人者と求職者

山ほどアップされたハローワークの求人票と格闘しながら、ふと感じたことがあります。

求人と求職
求人票と求職票
求人者と求職者

みなさん、意味を間違えずに使えていますか?

求人と求職

求人と求職という単語は、人材紹介業や人材派遣業に代表されるいわゆる人材ビジネス系の仕事に就いている場合を除き、普段の会話の中ではあまり出てこない気がします。

「ウチの会社、求人しているんだけど」

「私、求職してます」

あまり言いませんよね。用例が不自然? そうかもしれません。

求人とは

読んで字のごとく、人を求めること。

つまり求人とは働いてくれる人を探しているという状態のことで、人を雇用する側、人を採用する側=企業や団体、組織側から見た言葉になります。

求職とは

それに対して求職とは、職を求めるということ。

働く仕事を探しているという状態のことで、雇用される側、採用される側=個人の目線からの言葉になります。

 

「求人が出てる」とか「求人している」よりは「募集してる」という表現の方が、普段の会話の中では使われていると感じます。

同様に、気軽な普段の会話の中で「求職している」と使うことはまずないと思います。「仕事を探してるんだけど」といった表現が一番ありがちではないでしょうか。

求人票と求職票

求人する、つまり人を採用するにあたり、勤務時間や勤務場所、賃金(給与)、忘れちゃいけない会社名など、様々な条件をまとめたものが求人票と呼ばれるものです。

ハローワークや人材紹介会社が求人票を提示する場合、必ず掲載しなければならない項目が決まっていますので、ここで簡単におさらいしておきましょう(職業安定法第5条の3 第1項又は第2項)。

求人票に最低限記載すべき項目

1.労働者の業務内容
2.労働契約の期間
3.就業する場所
4.始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間と休日
5.賃金(賞与などについては別途規定あり)
6.健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用有無など

これ以外の項目に関しては必ずしも記載は必要ではありません。

また、ハローワークや人材紹介会社以外の、例えば求人サイトや無料の求人誌などに掲載する場合などは、これらの6項目は必須ではありません。

必須ではない、義務ではないとは言え、実際は利用する人の便宜や保護を考えて、法律に準拠してそれらの項目を掲載項目としていることがほとんどですから、大手の求人サイトや求人誌を利用する場合はまず問題はありません。

しかし、違う角度から見るならば、これらの6項目が明記されていない場合は何か後ろ暗いところがある求人、もしくは法律の知識がない人たちが募集をかけていると考えて間違いなさそうです。

人材の募集に関わる法律の知識がない人たちが募集をかけるような会社、つまり法律に則った活動や社内ルールなどの整備がなされていない可能性が高い会社に入って、その後にいいことが起きるとは正直なところ思えません。

そんな会社は止めておくのが吉、と感じるのは私だけではないはずです。

※「そんな会社だからこそ自分が入社して様々な整備をするのだ!」というポジションでアタックなさるなら別かもですが…歴戦の勇士以外にはあまりお薦めは出来ません。

求職票とは

言葉の上で、そして実際に見たり触れたりすることがほとんどないのが求職票だと思います。

求職票には一体何が記載されているのでしょうか。

求人票が「雇用する場合の条件を企業が記載(記述)しているもの」だとすれば、求職票は「雇用される場合の条件を個人が記載(記述)したもの」ではないか、と推測することが出来ます。

ハローワークに個人の情報を登録する際に提出する求職申込書

名前や住所、連絡先や希望条件などを記入して窓口や係官へ提出しますが、あの情報が登録された後に画面を通して見る場合、またはその情報が印刷されたものが求職票となります。

ハローワークで紹介状をもらうためにハローワークカードを出すと、バーコードを読み込んで「求職票」をプリントアウトしています。
「それ、もらって帰れますか?」と聞いてみたのですが「これはお持ち帰りいただけないんですよ」とご返事をいただきました。

ハローワーク以外でも同じようなものがあったハズ。

よい会社のよい仕事を探している個人が、雇用される条件、希望の仕事内容や勤務地、給与額や諸条件を書き込む場所…といえば様々な登録型の求人サイト。

このサイトに登録された個人の情報を求人企業や人材紹介会社側から見れば、それが求職票になっています。意識することなく、いつの間にか求職票を作っていたんですね。

同様の情報を求職票として作成し、個人のブログやSNSの固定ページなどに貼って誰からでも見られるようにすることも可能ですが、あまり一般的な方法とは言えないと感じます。

人の目に触れる機会が多い求人票に比べると、求職票というものはそれほど目につくものではありません。基本的な概念を理解しておけば大丈夫かと思います。

「仕事を探すにあたり自己のプロフィールや希望条件などを書き込んだ資料」

という意味においては、履歴書と職務経歴書も広義の求職票に含まれると考えることができます。ただし、私個人の約20年間の職業紹介業でのキャリアコンサルタント経験の中で、履歴書と職務経歴書を求職票と呼んだことは一度もありません。

求人者と求職者

「求人と求職、そんなもの間違えるわけないでしょ」

そう思っている方も少なくない、いやほとんどの方がそうだと思います。しかし、いきなり

「求人者とは?」

と問われた場合、間違えずに答えることは出来るでしょうか。

求人「者」?

求人「者」というからには人で、企業や団体じゃないわけだから、仕事を探している個人のこと?

ここまでの話では個人が絡むのは「求職」「求職票」だったけど、最後に「人」を付ける場合だけはねじれ構造的に求人側に回って求人者になっちゃうとか?

この求人者という用語は求職票以上にお目にかかることが少ないもので、人事や採用の仕事をしていたとしても、ハローワークでの手続きや講習会、厚生労働省のプレスリリースなどにご縁がなければ見たことがなくても不思議ではありません。

引っかけ問題的な存在のようにも思えますが、さすがにそこまで意地悪ではありません。

求人者とは、読んで字のごとく求人をする者=働く人を求める者であり、企業や団体などのことを指します。法人格があるので人として扱い、表現上「者」になっていると考えると分かりやすいでしょうか。求人企業、団体等と書くより少しはスマートですし。

対する表現となる求職者は職求する者=仕事を探している者であり、他と同じく個人の側の話になります。

求職者という言葉は使われることもありますので耳にしたこともあるでしょうし、求職者からの求人者という話の流れであれば正しく答えることができるかもしれませんが、いきなり求人者といわれた場合にキョドらなくてすむように、しっかり意味を押さえておきましょう。

まとめ

人を求める企業
=雇用する側の行動が求人、求人者、求人票

職(仕事)を求める個人
=雇用される側の行動が求職、求職者、求職票です。

キャリアコンサルタントの養成講習や実技講習では、求人や求職、実在の職業や職種などに触れる時間はほぼありませんし、実務の経験や社会人としての経験が短い場合に、これらの言葉を知らなかったとしても不思議ではありません。

また、キャリアコンサルティングに来たクライエントが必ずしも転職を考えているわけではありませんので、求人や求職、そしてそれらに隣接する用語に対する知識がキャリアコンサルティングの現場で必須とも限りません。

とはいえ、実際の相談の現場において、そのような話題に触れることになる可能性は少なくないと思われますし、その際にクライエントですら知っている用語を間違えて使用してしまったら、それだけで不安を覚えさせてしまうことに、最悪の場合は信頼を失うことになりかねません。

実際に胸を張って間違えている人事関係者やキャリアコンサルタントの方がたまにいらっしゃいますので、今一度ご確認の上、用法用例を守って正しくお使いください。

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